おひとりさまの相続で注意すべきこと

　核家族化や少子化が進む現代において、老後を「おひとりさま」として迎える方は珍しくなくなってきました。　

　誰にも相談しないまま最期を迎えてしまうと、残された財産や日常生活の後始末に大きな混乱を招く恐れがあります。

　そうした中で、おひとりさまが相続や終活にあたって注意すべきなのは、自分にもしものことがあった時に財産や身の回りのことをどのように処分するかを早めに考えておくことです。

　家族や親戚に残すのか、応援している団体に寄付をするのか、お世話になった人に相続してもらうのか。

　いずれにしても、健康で判断力がしっかりしているうちに意思を固め、形に残しておく必要があります。

　財産といっても金銭や不動産などの資産だけにとどまりません。住んでいた住宅の引き払い、葬儀や役所の手続きといった事務的なことも誰かに任せる必要があります。

　さらにペットを飼っている場合には、その子を自分の死後にどう託すかまで考えておかなければなりません。

　何も準備をしないまま亡くなれば、相続人がいない財産は原則として国庫に帰属してしまいます。

　自分が築いてきた財産を後世に活かしたいと考えるのであれば、生前のうちにしっかりと検討し、必要に応じて専門家に相談しておくことが大切です。

　また、相続させる相手にとっては財産が必ずしもプラスになるとは限りません。価値の低い山林などを突然遺言で相続させられて困惑するケースもあり、結果として不要な負担を与えてしまうこともあります。

　そのため、単に遺言を残すだけでなく、生前から「なぜその人に相続してほしいのか」を丁寧に伝えておくことが望ましいでしょう。

　理解を得たうえで遺言を作成しておけば、後々のトラブルも防ぎやすくなります。

　人の寿命は誰にも分かりません。しかし必ずその時は訪れます。特におひとりさまの場合は、頼れる家族が近くにいないことも多く、準備を怠れば周囲の人を大きく振り回すことになりかねません。

　自分の意思を明確にし、信頼できる人や専門家に共有しておくことで、自分らしい相続や終活を実現できます。

　早めに取り組むことこそが、残される人たちへの最大の思いやりになるのです。