生前贈与についても遺留分を請求できるのか

文責:弁護士 井川卓磨

最終更新日:2025年08月27日

1 生前贈与も遺留分侵害額請求の対象になり得る

 遺留分とは、法定相続人のうち、配偶者・子・直系尊属に保障された最低限の遺産の取り分であり、遺言や贈与等によって遺留分が侵害されている場合には、侵害されている分の取り戻しを主張することができます(遺留分侵害額請求)。

 遺留分侵害額請求の対象となるのは、相続開始時点(被相続人がお亡くなりになった時点)で存在した遺産だけでなく、一定の条件を満たす場合には、遺産の先渡しとして被相続人が生前に行った贈与分も含まれます。

 被相続人が生前に特定の相続人や第三者に贈与をしていた場合、他の相続人の遺留分が侵害されている可能性があるため、その相続人による遺留分侵害額請求権が行使されることも考えられます。

2 遺留分侵害額請求の対象となる生前贈与

 ただし、すべての生前贈与が遺留分侵害額請求の対象になるわけではありません。

 具体的には、次のような贈与が遺留分侵害額請求の対象になることがあります。

 まず、相続開始前1年間にされた生前贈与は、原則としてすべて対象になります。

 贈与の当事者双方が遺留分権利者を害することを認識しながら行われた生前贈与の場合には、相続開始1年以上前のものであっても、遺留分侵害額請求の対象になります。

 遺留分の侵害を知らずに行った生前贈与については、相続人に対するものか、相続人以外に対するものかで扱いが異なります。

 相続人に対するものについては、相続開始前10年以内の生前贈与のうち、特別受益に該当するものが遺留分侵害額請求の対象になります。

 相続人以外に対する生前贈与は、原則どおり、相続開始前1年間になされたもののみ、遺留分侵害額請求の対象となります。

3 生前贈与があった場合の遺留分の計算

 遺留分を算定する基礎となる財産には、相続開始時の財産に加えて、遺留分侵害額請求の対象となる生前贈与分も合算されます。

 これにより、被相続人が生前に多くの財産を移していた場合でも、相続人の遺留分を保護することが可能になります。

 例えば、相続開始時の財産の評価額が1000万円であり、生前に特定の相続人へ3000万円が贈与されていた場合、遺留分の基礎となる財産は4000万円になります。

 法定相続人が子2人であり、遺留分割合が4分の1なら、子1人あたりの遺留分は1000万円になります。

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